自己紹介
はじめまして。
私はフルタイムで会社員をしながらプロボクサーとして活動し、A級ライセンスを取得、日本ランキングにも入った経験を持つ元ボクサーです。
今回は、そんな私の実体験をもとに、スパーリングと試合の違いについてお話ししたいと思います。
私自身、プロデビュー戦で「スパーリングと試合ってこんなに違うのか!?」と戸惑い、思うように試合を進められず、悔しい敗北を経験しました。
この記事が、これからデビュー戦に臨むプロボクサーの方にとって、少しでも試合での心構えや、練習時に意識するポイントの参考になれば幸いです。
スパーリングと試合の主な違い
大きく分けると、次のような違いがあります。
- グローブの大きさ
- ヘッドギアの有無
- 観客の有無
- 減量翌日のコンディション
順番に詳しく解説していきます。
グローブの違いとヘッドギアの有無
まず一番大きな違いは、グローブのサイズとヘッドギアです。
スパーリングでは、通常14オンスのグローブを使用し、ヘッドギアも着用します。
一方、試合では8オンスのグローブ、そしてヘッドギアなしの状態で戦います。
14オンスと8オンスでは、まるで倍くらい大きさが違う感覚です。
イメージとしては下記イラストくらい違います。

実際、パンチの届く距離やディフェンスの感覚も大きく変わってきます。
距離感の違い
グローブが小さくなると、スパーリングでは届いていたパンチが、試合では届かないことが多くなります。
私自身も、試合で「パンチが届かない!」と焦り、つい前のめりになってしまい、いつもの距離感を崩してしまった苦い思い出があります。
特に、距離を取って戦うスタイルの選手は注意が必要です。
ディフェンスの違い
また、グローブが小さいことで、ブロックが甘いとパンチがすり抜けるリスクが高まります。
14オンス同士のスパーリングなら、多少雑なブロックでもグローブ同士が干渉し、ダメージを軽減してくれます。
しかし、8オンス同士だとそれがない。ほぼダイレクトにパンチを受けることになります。
私自身はブロック主体のスタイルではなかったため、そこまで苦労しませんでしたが、ブロック中心の選手にとっては大きな戸惑いポイントだと思います。
ヘッドギアなしのリスク
さらに、試合ではヘッドギアがないため、バッティング(頭同士の接触)によるカットのリスクが一気に上がります。
それに加えて、拳を負傷するリスクも上がります。
私もデビュー戦の第1ラウンド、相手の額を右手で殴ってしまい、右拳を骨折するという大失敗をしました…。
ヘッドギアがないぶん、拳への負担も大きくなるので、意識しておくべきポイントです。
お客さんがいるかどうか?
スパーリングでは基本的に身内だけですが、試合では100人〜1000人以上の観客の前で戦うことになります。
これにより、
- 緊張して体が思うように動かない
- 緊張でスタミナが異常に早く切れる
- 観客の歓声でテンションが上がりすぎてしまう
といった影響が出ることもあります。
ただし、いざゴングが鳴れば、意外と相手への集中で観客の存在は気にならなくなる選手も多いです。
私自身も、試合開始前まではドキドキが止まりませんでしたが、いざ試合が始まると、周りのことは全く気になりませんでした。
減量翌日の試合コンディション
試合前には必ず計量があり、減量明けには「水分補給」と「食事」が待っています。
理想は、経口補水液やポカリなどをゆっくり飲み、胃に優しい食事を少しずつ摂ることです。
しかし私は、初めての計量後、餃子の王将に直行し、脂っこい焼肉定食と餃子、さらにデザートにアイスやチョコをたらふく食べてしまいました(笑)。
その結果、試合当日は体が重く、思うように動けませんでした。
減量直後は「お腹は空いていないのに口が食べ物を欲しがる」感覚になります。
ここで暴食してしまうと、消化が間に合わず、コンディションに大きく影響するので注意が必要です。
当日計量について
プロボクサーには「当日計量」もあります。
試合当日の体重制限はありませんが、前日から体重が8%以上増えると、ウエイト変更勧告を受ける場合があります(JBCルール)。
下記リンクの『各種情報 → ウエイト変更勧告(直近3か月)』からご確認いただけます。
Japan Boxing Commission | 一般財団法人日本ボクシングコミッション | 一般財団法人日本ボクシングコミッション(JBC)公式サイト
ウエイト変更勧告を受けたからと言って階級を変える必要はありませんが、リカバリー後の体重を覚えておき、調子がよかった体重を目安に管理すると良いでしょう。
例えば、スーパーバンタム級(55.3kg)の選手が当日60kgで調子がよかったなら、次回も60kg程度を目標にするイメージです。
まとめ
スパーリングと試合の違いは、人によって感じ方も異なるかもしれませんが、今回は私自身の経験をもとにまとめさせていただきました。
普段の練習から
「8オンスだったら今のパンチ、当たっていただろうか?」
「8オンスだったら、今のパンチで効かされていたかもしれないな」
と、試合を意識して練習に取り組むことがとても大切だと私は考えています。
これからプロデビューを迎える皆さんの参考になれば嬉しいです。
デビュー戦、ぜひ悔いのないように、全力で戦ってください!
応援しています!
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